課長と私
自分のことより私のことを気遣ってくれる彼が恥ずかしながらも甘えてくるのが可愛らしくて。
「良い子良い子」
「……」
あ…ちょっと調子乗り過ぎたかな…
「亮くん…??」
「これからさ…子供が生まれて、きっと俺も、楓ちゃんも忙しくなって…」
ぽつりぽつりと話す言葉に耳を傾ける。
妊娠がわかってからこんな話をするのは初めてだ。
「そしたら…2人の時間って、あんまりとれなくなるから…今のこういう時間、大切にしていきたいと思って。」
「そんなこと…考えてたんですか?」
「……結構、考えてた。」
「…亮くん。」
きっとそうだろう。
この先、お腹が大きくなるたび私は自分のことも彼に手伝ってもらわなくてはいけないし
産んだ後は毎日があっという間に過ぎていく。
2人の時間をとるのは難しくなってくる。
赤ちゃんのことは素直に嬉しい。
でも、少しだけ寂しさを覚えてしまった。
そんな顔をしてしまったのか、彼が黙って私の体を包み込んだ。
「少しでも長く楓ちゃんといたい。」
「私、死ぬ前みたいじゃないですか…」
「そうじゃないけど。」
「私も…亮くんとの時間、もっと欲しいです。」
「…うん。」
目が合って、短めのキスをした。
幸せが胸に広がっていく。
「寝よっか…」
「はい…」
ダブルベッドに入り彼の方を向く。
腕枕をしてくれる彼の頬にキスをした。
「おやすみなさい。」
「…そういうことされると眠れないんだけど…」
「じゃあ…眠れるまで羊を数えてあげましょうか?」
「楓ちゃんが先に眠るに一票。」
「えー?そうかなぁ…」
「………キスしていい?」
頬にかかった髪をなでる。
少しかすれた声にドキドキする。