課長と私
「課長、朝ごはんが出来ました。」
「んー……業務連絡みたい………おはよ…」
「ふふ…おはようございます。」
「……んー、もうちょっと…」
低血圧は変わらずだ。
目がなかなか開かない。
「亮くん…お味噌汁冷めちゃいます。」
「…起きる……」
一生懸命起き上がろうとしている。
大きい子供を起こすようだ。
ちょっとかわいい。
数分かかったが彼がようやく目を覚ましてくれた。
お味噌汁は冷めないまま口にすることができた。
「…会社行っても楓ちゃんいないのつらい。」
「何言ってるんですか。……寂しいのは、私もです…」
「本当?」
「嘘ついてどうするんですか。」
「嬉しい。早く帰ってくる。」
「じゃあ、夕ご飯用意しておきますね。」
「うん。…具合悪くなったら連絡して。直帰する。」
「だめですってば…」
真顔で言うものだから可笑しくて笑ってしまった。
彼が身支度をしてる間に皿洗いを済ませ、見送りの準備をした。
すぐに先ほどとは違ったきりっとした雰囲気の彼が戻ってくる。
「なんか、亮くんがスーツを着てるの久々に見た気がします。」
少し曲がったネクタイをまっすぐになるように整える。
そんな私の手を優しく包み込む。
「もう、新婚さんみたい。じゃなくて、新婚さんだね。」
「茶化さないでくださいよ、ほら、出来ました!」
ぽん、と胸板をたたく。
本当は嬉しくてニヤニヤしそうだった。
「楓ちゃん、会社の皆にも1回挨拶しようね。」
「そうですね。倒れてそのままですもんね…」
「まぁ、なんとなくばれてるような気もするけど。」
そうですね。
だって、お姫様抱っこして連れてかれましたもんね私。
そのあとも会社そっちのけで病院来ちゃいましたからねこの人。