課長と私
「…ん。」
じんわりと体温が私の中まで入ってくるようだった。
「…嬉しいのに、生殺しだ…」
「何がですか?」
「うん…。こっちの話。」
体調が戻って来た私はそのあと普通にお風呂へ入り、ためていた百合さんのラインを返してベッドにもぐりこんだ。
「姉さんと話してるの?結婚式の。」
「あ…はい。百合さんの方でほとんど決めてもらってて…ありがたいです。」
「あの人はそういう人だから…甘えとけば?」
「亮くん、やりたくないんですか?結婚式。」
「そう…じゃないけど…」
「私、タキシード姿の亮くん見たいんですけど…着てくれます?」
「……楓ちゃんもウエディングドレス着てくれるよね?」
「着る、絶対着ます…似合うかは分からないけど…」
そういえば何も自分の手入れが出来てない。
大丈夫か私…
「似合うよ…絶対。」
「そうですか?」
「うん。…絶対。」
とろんとしてきた目が静かに閉じる。
私も彼の寝顔を見てから目を閉じた。