課長と私
ep.10
「じゃーん!!どうよ楓ちゃん!」
「………。」
「だ…大丈夫?」
「こ、こんなにいっぱい…」
「おー、よしよし。そんなに嬉しそうな顔してくれて良かったよー」
目の前には色とりどりのドレス。
とてもじゃないけど選びきれないほどの。
「楓ちゃんは何色が好きなのかな?…あ!体調悪くなりそうだったら1着の方がいいよね、白選ぶ?」
「百合さん…ありがとうございます、こんな…こんないっぱい…」
「一生に一度、であって欲しいからね。可愛い可愛い妹よ!」
百合さんにはたくさんの伝手があるようだ。
ウエディングプランナーのお友達に口利きをしてくれたみたい。
「あ、あの…これ、見てもいいですか?」
「こちらですね。人気なんですよ、星空みたいで。」
「星空……」
「光の具合で見る側も楽しめますし、何より着てる側が更に美しく、綺麗になりますよ。」
ネイビーに小さなスワロフスキーが散らばっている。
本当に星空を見ているようだった。
「試着…してもいいですか?」
「ご用意しますね。こちらへどうぞ。」
広い試着室へ入り、スタッフさんに手伝ってもらいながらドレスを着た。
「楓ちゃーん、私にも見せてー!」
カーテンの向こう側で百合さんの声が聞こえる。
「カーテン、開けますね。」
「は、はい…」
クリーム色のカーテンを静かに開けていく。
目の前にスマホを持った百合さんがいた。