課長と私
「今でも好きだ、お前のこと」
「うっ…」
「何だよその反応」
「だ…だって……」
「好きなんだからしょうがないだろ。ずっと…片思いってことだな。」
大きくため息をついた。
一途に私のことを思ってくれる彼に少しだけ申し訳ない気がしていた。
曖昧な返事をしてしまったのが心残りだった。
「あの…女なんて、星の数ほどいるから…!」
「分かってる。…お前なぁ、好きなやつからそれは聞きたくないんだよ。」
「ご、ごめん…」
「もうちょっとだけ、引きずりたいんだ…」
「…うん。」
「あーあ、辛気臭いな!相手が課長じゃなかったら絶対負けないのに!ってか、学生の頃から付き合ってたとか、反則だろ。」
「すっごい自信だね…ばかじゃないの」
なんとなく吹っ切れたような彼の言葉に笑ってしまう。
良い友達になっていけるだろうか。
「楓ちゃん。…話終わった?」
「あ、すいません。お待たせしました…っ」
廊下の方から彼が声をかけてきた。
となりにいる藤崎もすぐに立ち上がる。
「あの…課長。」
「ん?」
「俺、須藤のこと好きです。結婚が決まった今でも、というか…しばらくは吹っ切れそうにありません。」
「ちょっと…藤崎!」
何も課長本人に言わなくても…!
「だから、もう少しだけ片思いします。でもいつかは、諦めます。」
「あぁ。」
「だけど、もし彼女が悲しむようなことがあれば、容赦なく奪いに行きますのでよろしくお願いします。」
「いいよ。絶対離さないから。」
先輩の一言にも、藤崎の一言にも気恥ずかしくてドキドキしっぱなしだった。