課長と私
「あー!楓っ!結婚式素敵だったよ、ドレスも超似合ってる!…課長もかっこ良すぎです、一生ついていきます。」
「ふふ。緩奈興奮しすぎだよ。…これから迷惑かけること多くなるけど、よろしくね。」
「なーに言ってんの。こういうときぐらい頼ってくれなきゃ友達失格でしょ。…本当によかったね。」
「…うん。ありがとう。」
優しくて、頼れるお姉さんのような存在の緩奈。
私の抱えている仕事は、緩奈に任せておけば大丈夫だろう。
彼女の言葉に涙腺が緩んでしまいそうだった。
「楓ちゃんまた泣きそうになってる。」
「だって…感動しちゃって…」
「泣き虫。」
「もー……」
鼻をすすっていると「楓!」と明るい声で話しかけられた。
隣には久々に見る和田さんもいる。
「え、泣いてるの?大丈夫?ハンカチいる?私の涙もついてるかもだけど…」
「秋穂ー…もうやめてよ、ちょっと泣きそうになっただけ。」
「今日、誘ってくれてありがとうね。すっごく良かった!」
「本当?来てくれてありがとうね。」
「ううん。なんか…自分のことのように嬉しかった。」
へへへ…と笑ってくれる彼女の表情にホッとした。
「あ、そういえばブーケトスしなかったね!もともと内容に含まれてなかったか!」
「実は……あげたいなって思ってる人が二人いたもので…」
「二人?え、誰なの?」
隣にいる彼とアイコンタクトをとり、後ろに隠してあった花束を二つ取り出した。
私がブーケトスの話をしたとき、彼も花束をあげたい人がいると分かった。
秋穂と和田さんの二人。
花束を目の前に出された二人は少し困惑気味。
「これ、二人に受け取ってほしいんだけど、だめかな?」
「え…」
「…幸せにしたいんだろ、彼女のこと。」
「亮…」
「ほら、持って!」
なかなか手を出さない秋穂の手を掴み、半ば強引に花束を持たせる。
「幸せにしてくれるんですか…?」
「…うん。するよ、絶対。」
不安そうな声の彼女を安心させるかのように、力強く返事をした。
不覚にもきゅんとしてしまう。
「和田さんかっこいい…!良かったね秋穂!」
「楓ー……」
「秋穂ちゃ…泣かないで…」
「あーあ、和田のせいだ。」
「亮うるさい。」
「うっ…うっ…ーーっ」
「秋穂ー…結婚式、絶対行くから。和田さん、秋穂をよろしくお願いします。」
大きな目からぼろぼろと流れ出す涙は彼が止めてくれるはず。
あとは和田さんに任せよう。
まだ泣き止まない秋穂の背中をなだめるようにそっと撫でる姿にホッとした。