課長と私
びっくりして薄目だった目を思いっきり開けた。
それと同時にぐるっと視点が変わった。
気づくと天井が見えている。
「んんんんんっ」
吸いつくようなキスに彼の肩を押す。
「……何?」
「はぁ…はぁっ……いきなり…っ」
「…俺のこと、好き…?」
「へ!?」
「俺ばっか…好きなのは嫌だから…。」
そう言いながら首筋に顔を埋めてくる。
ピリッとした痛みにキスマークがついたことが分かった。
彼の発言に、何とも言えない気持ちになった。
悲しいような、寂しいような、せつないような。
……そんな訳ないじゃない。バカなこと言わないでよ…。
ふつふつと煮えるような何かが私の口から出てきた。
「お、俺ばっかって…私が先輩のこと、嫌いなわけないじゃないですか!」
「…え」
「わ、私…未だに先輩の彼女なのが不思議なくらいなのに…っ」
「楓ちゃ…」
「先輩が私に話しかけてくれるたびに、触れる度に、ドキドキして…嬉しくて、もっと一緒にいたくてっ…あぁ、私この人のこと好きなんだなって、大好きなんだなって思ってるんですから…っ」
「…ごめ…ん。泣かないで…」
彼に言われて気づいた。
私、必死すぎて泣いてたんだ。
腕を引っ張られ、上体を起こす。
長い指で涙のしずくも優しく掬い取られた。
「今度は…お酒、飲み過ぎないで…早く帰ってきてください。」
私の言葉に黙ってうなづく。
彼はふらふらしながらもベッドルームへ消えていった。
私はというと、少しの間放心状態でその場から動けなかった。
ぼうっとしていると、置き去りにされた彼のカバンから着信音が聞こえた。
「はい、成瀬の携帯です…」
「あ、もしかして…須藤さん?」
「はい、そうですが……」
「久しぶり。覚えてるかな、和田…なんだけど。」
和田さん…
大学の時、彼とよく一緒にいた男の人??