課長と私
「あ!和田先輩?お久しぶりです!」
「良かった、覚えてくれてて。…亮、無事に帰ってるみたいだね?」
「さっき帰ってきましたよ。珍しく酔っぱらって……」
「ごめん、俺が結構飲ませちゃったから…須藤さんのこと嬉しそうに話すもんだから、つい。」
「わ、私のことですか??」
「感情表現苦手でしょあいつ…須藤さんのこと本当に好きみたいで、早く帰るってうるさかったんだよ?」
「本当ですか…?なんか、照れますね…」
「結婚したいって言ってた。」
携帯を落としてしまうかと思った。
本人に言われたわけでもないのに、心臓が大きく波打ち始めた。
「へ……」
「そんなこと言うのが珍しくて飲ませすぎちゃったんだよね、本当ごめんね。…でも、あいつは本気だと思うから、今日のことは許してあげてね。」
和田さんの配慮に感謝だ。
「あの……」
「ん?」
「いえ、ありがとうございました。」
「…そう。あ、これ役に立つかわからないけど…」
「はい?」
和田さんが特別に教えてくれた最後のことは、胸の奥にしまっておこう。
試す時が来るだろうか。
「さて…」
彼の残していった残骸を大まかに片づけ、私もベッドルームへ行く。
そこにはすでに眠りについた彼の姿があった。