課長と私
「あと、いい匂いがした…」
「おいおい字の次は匂いかよ…すごいなお前ら、それで付き合うところまで来たんだもんな…」
酔っぱらっていた西もだんだん正気を取り戻してきた。
ことの重大さに気づいたらしい。
「デートは?どっか行ったとか…聞いたことないし」
「うちに来て…ご飯作ってくれたり…」
「いきなりお家デート??…こいつの顔面偏差値でしか出来ないじゃん…」
「西うるさい。亮はもともと人が多いところ無理だろ…楓ちゃん緊張しただろうに…」
彼女の心の寛大さにも感心する。
普通男の家に行くなんて簡単にできることじゃない。
「めっちゃ美味しいご飯……」
「分かったってば…。じゃああれだ、そうやって美味しいご飯を食べた後にいちゃいちゃしてたんだろ。」
お…西が踏み込んだ質問をし始めた。
「……しなかった。付き合って…3か月、4か月くらい…」
「家に彼女がいるのに!?…ベッドがそこにあるのにか?」
「…ん。」
「おまっ…何やって…この、イケメンが…」
亮の肩を揺さぶった後、抱きしめる西。
亮がすこぶる嫌そうな顔をした。
「楓ちゃん、何にも言わなかったの?」
「……いや、さすがに言ってきた…お酒の力を借りて…」
「お酒の力?」
「詳しくは…言わない」
「そう…」
何かがあったらしい。
彼女の不利になることは決して言おうとしない。そこはあくまで紳士。
「なぁ…亮は楓ちゃんのどこが好きなんだ?」
溺愛しているのは分かったけど、具体例が欲しい。
字とか匂いとか、動物みたいなことじゃなくて…