課長と私

彼女は確かに綺麗で、性格も優しそうなイメージはある。


でも、そこまで亮の好みなのかがずっと不思議だった。

少なくとも大学時代、それも彼女が入学する前までの年で付き合いのあった女性のタイプとは違うような…
まぁ、恋愛について言いたがらないコイツの好みなんて知らないけど。


「…分かんないけど……俺が楓ちゃんの傍にいたいって思ったから…」

「………亮、お前まじ良いやつだな。」

「良い男すぎ。俺も惚れる。」


一瞬沈黙があったものの、パーフェクトすぎる回答にぐうの音も出ない。

俺も秋穂ちゃんに対してそんなことが言えるだろうか。


大学時代、彼女からの猛烈なアピールで交際を申し込まれ、OKをしたものの就職後の会社でうまくいかないことが多く彼女にあたってしまうことが増えた。

いろいろなことが重なって、俺自身に余裕がなくなってしまったために、彼女に別れを告げた。
それが、数年たってまた交際し始めたのが奇跡かと思うくらい。

でも、彼女に想いをうまく伝えられないことが多い気がして少しだけ悩んでいた。


「亮は…楓ちゃんのことちゃんと幸せにしてて偉いな。」

「…幸せに出来てるか…分かんない。」

「え?」

「分かんないけど…俺に出来ることがあるならやる……楓ちゃんが喜んでくれたら、俺も嬉しいし…」

「そっか…」


亮も手探りで彼女のと付き合っている。

こういうものに正解のルートというものは無いんだ。
…というか、それぞれで違うんだ。

自分の悩んでいることは、大したことじゃないかもしれない。


俺は俺のやり方で、亮は亮のやり方で彼女たちと向き合うことが1番良いのかもしれない。

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