課長と私
聞いているこっちが恥ずかしくなってしまう。
楓はよく私なんか釣り合わないよと言っていたけど、こんなに愛されていてその言葉が出るのは、彼女もかなり贅沢で鈍感だと感じる。
「あの子、しっかり言ってあげないとプロポーズも分からないかもしれないですよ。」
「だよね、同棲するのも何回スルーされたことか」
「ふふっ、経験済みでしたか。」
「まぁ俺も恥ずかしくてなかなか言えないことがあるんだけどね…」
「ペラペラ言われても響かないですよ。」
「難しいね…」
課長とこんなにナチュラルに話したことは無いだろう。
とても話しやすい。いままで以上に信頼できる上司だと分かった。
「俺、悪口とか言われてない?」
「言わないですよ、楓はもちろん、部署の皆も言ってるところは見たことありません。」
「えー、本当かな」
「私、この部署に骨を埋める覚悟です。」
私の言葉にクスリと笑う彼。
あー…これは、何人か殺せる威力持ってるな…。
相手が楓で本当に良かった。
私はいい友達と、いい上司に恵まれて本当に良かった。
「…で、そっちは相手はいるの?」
「わ、私ですか…!?」
「いないの?」
「えっと…今はちょっと気になってる人がいる…かな、的な」
「大分はぐらかしたね」
「私のことはいいんですー…」
「何かあったらうちの楓に相談してね」
「承知しました。」
「急に業務連絡みたいになったね」