課長と私
一喜一憂している私に隣からくすりと笑う声が聞こえる。
「ちょっと複雑だから、また今度ね。」
「そう…ですか…」
私の知らない彼がいるということに少しだけモヤっとする。
全て知っていくにはもう少し時間がいるみたい。
「ねぇ、楓ちゃんの卒アルは?」
「え?私のですか…?」
「見たいんだけど、だめ?」
「私…可愛くないですよ?大学デビューですし…」
「もっと見てみたい」
「…後悔しないでくださいよっ」
捨て台詞を吐きながら渋々アルバムを取りに行く。
正直あんまり見せたくない。
黒髪でおさげで、眼鏡だし、地味だし…
「本当に見ます?」
「見たい」
「……しょうがないですね」
最後の抵抗も虚しく終わった。
ソファに戻り、隣通しで座り直す。
彼は私からアルバムを受け取ると、嬉しそうに開き始める。
「何組だったの?」
「3組でした。私の学校、そんなに人数多くなくて」
「3組ね…ここか。楓ちゃんは……これ?」
クラス全員で撮った写真の隅っこの方。
一発で当たってしまった。
「何で分かるんですか…」
「ん…可愛いから?」
「…もっと言ってください…」
「三つ編み、可愛いね。眼鏡も似合ってる。」
「あ…そっちですか…」
ちょっと残念。
彼はアルバムに夢中だ。
数ページめくった後、彼がふと手をとめた。