課長と私

「わ、私…だって、亮くんの初めて、欲しかったのに…」


彼と付き合ってからいつだって考えてしまう。
きっと今まで、私より素敵な人と付き合ったことだってあるはず。


「手を繋いだり、腕を組んだり…キスも、その先も…私とだったらよかったのにって…」


目頭が熱くなる。
分かりやすい嫉妬だと自分でも理解している。

理解しているけど、欲しかったものはもう奪われているからどうにもできない。

悔しい、もっと早く彼と会っていれば…
会っていれば、付き合うことが出来たのだろうか…


「楓ちゃん」

「それでも…初めてこんなに長くお付き合いしてるし…は、初めて同棲してるし…いろんなところ、一緒に行くのも、亮くんが初めてで…もっと、一緒に居たいと思うのも初めてなのに……それじゃ、ダメですか…?」

「………。」


アルバムを閉じて机に置く。

暖かい手で私の頬に触れた。
溜まっていた涙も直前で拭われていく。


「ごめん、いじわるした」


大きい体が包み込んでくれる。


「ダメじゃないよ、楓ちゃん」

「……。」

「これからの初めては俺と、でしょ?」

「……はい。」


寂しい気持ちがどんどん無くなっていく。


「俺は楓ちゃんの最大の初めてを貰えるからね」

「最大の初めてってなんですか?」

「結婚と、子供」

「えっ…!」

「くれないの?」


すでに1つはもうあげているようなものだ。
左手の薬指を見る。

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