課長と私

「で、好きだったらどうするんだ?」


変に優しく問いただす藤崎に動揺を隠せない。


「ど…どうもしない…よ。」

「へぇ」

「何それ…」

「…何で分かったのか知らねぇけどさ」


私の答えに吹っ切れたように話し出す藤崎。


「好きだよ。お前のこと。…たぶん半年くらい前から。」

「そんな前から…?」

「お前、全然気づかねぇし…気まずくなるのも嫌だったし、今まで言わなかった。今の距離感が丁度いいかと思って。」


鈍感と言われても文句は言えない気がした。

恥ずかしげもなく淡々と言葉を伝える藤崎が男らしく、今まで意識していなかっただけに急にかっこよく見えてくる。


ダメだって。
私には、先輩がいるのに。
数日前にヤキモチだの何だの言いあってたばっかりなのに。


「だから、結構ショックだったんだ。この間のあれは。」

「あれ…?」

「キスマーク」

「……。」


両頬の熱がこもっていく。
言葉にされると本当に恥ずかしい。


「何でお前が恥ずかしがってんだよ。……だから、諦めようとした。」


「……。」

「でも、当分無理だ。」

「え…。」

「っていうか、諦めないで待つことにした。」

「え!?」


先輩。
悪いほうに効果があったみたいですよ。


「お前が今の彼氏とうまくいかなくなったとか、別れるってなったその時は、容赦なく奪ってやる。」

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