課長と私
「楓ちゃん、自分が何したのか覚えてる?」
「う…」
「で、どうする?」
「い、行きますよ~…っ」
羞恥心を振り切って、車から出る。
冷汗が出てきた。
先輩は何事もない顔でフロントのスタッフから鍵を受け取り、部屋へ向かっていく。
私も置いて行かれないように半歩後ろをついて歩く。
「疲れたぁ…。」
部屋に入るなり大きなベッドに倒れこむ先輩。
そういえばさっきの水族館みたいな人ごみは苦手って言ってた気がする。
私の知らない間に無理をさせてしまっていたのかも知れない。
それに加えて昨日の失態。疲れもたまるだろう。
「先輩、何か飲みますか?」
「んー、お酒ー」
「…はい。」
ビールをグラスにうつして、ベッドの近くに持っていく。
この人、もうここに泊まる気満々だ…。
「先輩、飲み過ぎないでくださいね。」
「俺強いよ?」
「…知ってますけど。」
「酔うほど飲んでいいの?」
「ダメ…です。」
先輩が酔っぱらったところは見たことないけど、危険な感じがするのは私だけでしょうか。
「楓ちゃん、何でそんな遠いところにいるの」
「え!?…そ、そうでもないですよ?」
ベッドに寝転んでいる先輩から極力離れた場所にある椅子に腰を下ろす私に一声かける。
この後の展開がなんとく、なんとなーく分かってしまっているから。
それにしても…そんな目で見られると罪悪感が…。