課長と私

私は会社から少し離れたアパートに何年か前から住んでいる。
勤務地は高層ビルが立ち並ぶ所で、1人暮らしをするにはそれなりに所得が無いと厳しい。

築20年とまぁまぁ経っているが、管理をしている大家さんもいい人。

自分の部屋も10畳あって、女性の1人暮らしにしてはなかなか広い方だと思う。


「今日も疲れた~……」


ラッシュの電車から降りて、駅からそう遠くない自分のアパートに向かう途中。
立ち仕事で、パンパンの足を引きずりながら一生懸命歩く。


「あの!須藤さん!」

「あ、真鍋さん!こんばんはー。」

「こんばんはー…あはは、今日も疲れてますね…」


なるべく全力で笑顔を向けたつもりが、疲れていることがバレてしまったようだ。


「はは…いつものことなんですけどねぇ…。」


後ろから声をかけてきたのは、お隣さんの真鍋さん。
詳しくは聞いたことがないが、家から左程離れていない近くの工場に何年か勤めているらしい。

こんなに優しそうな雰囲気を出す男性なのに、未だ未婚っていうのも噂で聞いた。


「須藤さんは頑張り屋さんですね。」

「え?何でですかー?」

「いやぁ…なんとなく。会社勤めって、男性の方が多いんでしょう?」

「そうですねぇ…私の部署も7割は男性ですし…全体的に男の人は多いですけど…」

「そんな中で働いてるなんて、すごいですよ。尊敬します。」


真鍋さん……
こんな私のことを尊敬だなんて…!!

本当に良い人!!


「あっ、じゃあ僕買い物していかないと何もないんで、ここで!」

「そうなんですね、気を付けて!」


真鍋さんと十字路で別れて、私は自分の部屋へ向かう。

ここ最近は大半を先輩の家で過ごしているため、自分の部屋に帰って来ても久しぶりな気がしてならない。

それでも家賃は一律とられるのだが。
< 42 / 263 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop