課長と私
触れていいのか分からなくて、さまよう手を先輩が握ってくれる。
「するよ?」
「は、はい!」
「そんな緊張しなくていいのに…」
「でもっ……ん。」
1回目のキスの方がリラックスして出来た気もする。
でも、2回目のキスは私の緊張がほぐれるまで何回も、何回も優しくしてくれた。
胸がはち切れんばかりにいっぱいだ。
今までは先輩とこんなに長く話すことは無かった。私に興味なんて無いだろうと思ってしまうほど。
先輩が私のことをいつ好きになってくれたのかは聞く勇気が出なかったが、他愛のない話で盛り上がり一気に距離感がグッと縮まった気がした。
帰り際、すでに用意してあったのか合鍵を渡された。
持ってるだけでお守りのような力を発揮しそうなその鍵を無くさないようにキーケースにすぐつける。
嬉しいという感情が顔に出ていたのかクスッと笑われてしまった。
「送ってくよ」
「よ…よろしくお願いします。」
なんでもない、こんな日に私と先輩は付き合いだした。
先輩が大学を卒業し、会社に入社する数か月前の話。