課長と私
それからは季節が過ぎるスピードが速かった。
先輩が就職をして、私たちも無事に進学が出来た。
秋穂と和田さんは私と先輩が付き合った少し後に付き合い始めたらしい。
お互いに自分のことのように喜んだ。
先輩のいない大学生活は少しだけ寂しい気持ちもあったけど、思ったよりも早く進んでいった。
私達がもともと毎日連絡を取る中ではなかったため、秋穂には大丈夫かと心配された。
だけど、3日に1度ぐらいくる連絡が嬉しくて学校は頑張ることが出来た。
あとは定期的に先輩の家に行って夕飯を作りつつ生存確認をしていた。
そんなことを繰り返していたら、あっという間に時が過ぎて、いよいよ私も就職活動をし始めた。
「秋穂ー…ここの説明会行く?」
「うーん…あんまり興味ないんだけど…一応行っておこうかな…」
「じゃあ、私は先にここに行ってくるね…じゃ、またあとで!」
「ほーい。あとでねー。」
大手企業が1度に説明会を開いていたこの日も、私は秋穂と一緒に端から説明を聞いていた。
正直進路は深く考えていなかった。だから今めちゃくちゃ迷っている。
数年でこんなに自由が無くなるなんて思わなかったけど…
サークルもなんだかんだで楽しかったなぁ…
~♪
やば…
サイレントにしておくの忘れてた…
なり続ける携帯の着信音を少しでも小さくしようと両手で包み込み、いそいそと会場の隅っこへと走った。
こんなときに一体誰だろうだなんて呑気に思っていたとき。
「あ…。」
相手は連絡もあまりマメではない彼からだった。
最近仕事が忙しいのか、だいぶ放置されている。
このまま自然消滅かもだなんて何回も思った。
“うちの会社、説明会してるよ”
「エスパーか…」
説明会に行くだなんて言ってないのに。
…というか、先輩の会社あるの知らなかった。