課長と私
最後の夏休みに入る数日前。
絶賛前期のテスト期間中。
「秋穂…どうしよう。」
「んー?次の教科苦手だっけ楓。」
「違うって!ほらこれ!」
次の教科までの少ない勉強時間。
あまり使わなくなったメールに一通の通知が来た。
「楓…あんたもしかして、柳瀬先輩の会社、最終面接通ったの…?」
「もしかしなくても合格って書いてあるんですけど…」
「すごい……すごい!!!」
「ちょっ…秋穂静かにしてよ!…どうしよう、これ。」
「えっあんた違う会社行きたいの?初耳。」
「違う…。手が…手が震えて…先輩に報告出来ない…」
驚きと嬉しさと不安と。
いろんな感情が入り混じって右手に震えがでてしまった。
次の教科のテストはだめかもしれない。
そんな私を見て吹き出す秋穂。
笑うよりなによりこの右手をなんとかしてほしい。
休憩後のテストは、震える右手でなんとか乗り越えはしたが、正直点数には期待できないと思った。
相変わらず先輩に報告が出来ないまま1日が過ぎてしまった。
震える手で押せたのは通話ボタンだけだったので、先輩に直接報告することにした。
私からの連絡に少し驚いた風の声は、私の心を落ち着かせるには十分だった。