課長と私

それから数日して、時々先輩の家へ通うという前の生活に戻った。

この日も先輩の家へ来ていた。
いつも通り、のんびりとしたお休みを過ごすんだと、この時の私は思っていた。


「先輩、もう3時ですよ?いつまで寝てるんですかー。」

「まだ3時…。」

「…どこか、行くんじゃなかったんですか?」

「行くよー、あとちょっと…。」


外はすっかり日が高くなっていて、私と言えば暇つぶしに掃除や携帯をいじっていた。

結局、先輩が動き出したのは4時過ぎからでちょっとお洒落なレストランに連れて行ってもらった。
そういえば今日は記念日だったとレストランでプレゼントをもらったときに気づく。


「絶対!絶対絶対ぜーったいお返ししますんで、待っててください!…ごめんなさい。」

「さっきからそればっかりだね楓ちゃん。全然気にしてないのに。」

「だってー…どう考えても先輩が忘れてるでしょそういう日…。」

「何それひどい。先入観良くないよ。」


先輩の家に着いて、何か悔しくて…同じことばかり頭の中でリピートしてる。


失態だ…
記念日を忘れるなんて。


「…寝よ……。」

「えっ…散々寝てたのに寝られるんですか…?」

「俺の特技」

「ちょっと…先輩…」


私がそんなことを言ってる間に先輩はゆっくりと眠りの世界に落ちていった。
先輩が寝ているベッドの近くに座って寝顔を眺める。
本当に綺麗な顔で、ずっと見ていられる。


もし

もし、私がこの人と結婚したら。
そんなこと、何十回も考えた。

私ももう20代後半になるわけだし、周りの友達も結婚して赤ちゃんも生まれて…
SNSもそんな写真が溢れかえっている。
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