課長と私

幸せそうな写真が送られるたびにちょっとだけうらやましくて。

遠まわしに何回かプロポーズのようなものをされている私は、1度頷けばもしかしたらこの人と家族になれるかもしれないのに1歩を踏み出せないでいる。

理由はシンプルで。
私と先輩は立場が違うし、先輩にはもっと私じゃない誰かが似合う。
そんな気がしているから。

もっと綺麗で、大人っぽくて
同じ会社にも綺麗な人達はたくさんいる。
そんな人達と並んで仕事をしている先輩の姿を見ると、やっぱり自分は“違う”と思ってしまう。

やんわり先輩にそのことを言った時もあった。
その時は先輩が少しだけ不機嫌になった。
俺のことを気にしてくれるのは嬉しいけど、楓ちゃんの気持ちが知りたい…って。

その言葉が胸の奥につっかえて、今でもまだそのつっかえが取れない。


「先輩にはもっと……お似合いの人がいるんですよ。」


誰にも聞こえないような、かすれた声で呟く。
その時、サイレントモードにしてある携帯画面が光った。

相手は緩奈。 
どうしたんだろう、こんな夜に。

眠りについた先輩を起こすと悪いのでクローゼットのある部屋に移動する。


「どうしたの緩奈…?」

「あ、ごめんね楓ー。いや、なんとなく電話したいなって思って。」

「そっか。私も緩奈の声聞きたかったなーなんて思ってた。」

「本当?じゃあ以心伝心だ、私ら。…なーんて。」

「ふふ…。なんかね、今の……付き合ってる人と…いろいろ考えちゃって…」


少しずつ。少しずつ。
私の胸の奥にあったものを緩奈に話していく。
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