体から堕ちる恋――それは、愛か否か、
優は綾香が昨日帰省先からかけてきた電話の話を思い起こした。

『うちのお母さんね、岡山にある優君とこのフラワースクールに通っているのよ。お盆休みなのにお稽古はあるのね』

綾香が母親に優との結婚をなんとなくほのめかし、それを母親が確定事項として教室のスタッフに話し、それから一気に広まったのだろう――――優のこの推測は、だいたいのところ正しかった。
ただ綾香が結婚をほのめかしたのではなく結婚すると断言し、周囲に話が広まることも想定済みで母に嘘をついたという点を除いては。

綾香がなぜそんなことをしたのか。それは周りから結婚話を盛り上げて、優を早くその気にさせたかったからに他ならない。美弥の存在が綾香を焦らせているのである。
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