体から堕ちる恋――それは、愛か否か、
父との電話を終えた優は美弥のそばに行き、
「なあ、砂浜で飲まないか?」
と提案した。

もっと海の近くに行きたくなったのだ。

「いいわね」
という美弥の返事を合図に2人は室内に戻り、優は冷蔵庫から白ワインを出し、美弥はキャビネットからワイングラスを出した。

「ライチとチーズも持って行こう」

木綿のトートバッグに、優は白ワインと沈んだ赤色のライチ、ミモレットのチーズ、ワインオープナーを、無造作に突っ込んだ。

テラスから降りて、2人とも裸足のまま海辺に向かって歩く。
夜気でひんやりと冷えた砂が気持ちいい。
波の音にまぎれて、時折切羽詰ったようにジジっと鳴くセミの声が響く。

優は隣で揺れる美弥の手を握った。
手をつないで大三角がまたたく夜空の下を歩き、波が押し寄せる5メートルほどうしろに腰をおろした。
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