体から堕ちる恋――それは、愛か否か、
「大丈夫だよ」

生美が脈絡もなくそう言った。

「大丈夫って、何が?」
「父さんが、優は女性連れだけど余計な詮索はするなよ、って言ってた。りょーかいだから、早く来てよ。そこから飛ばせば1時間ちょいで来られるでしょ」

荷物は置き忘れていったくせに、そんな忠告は覚えていたのか。

「もしかしたら父さんはどうしてもフェラーリを運転したくて先に帰っただけの確信犯かもしれないな」
「あーーーーーー! あり得る!」

優はため息をつき、「わかったよ。行ってやるよ。どこにいんだよ」と、ふてくされたように聞いた。

「良かった! ホテル『カムナ』のラウンジにいるから着いたら連絡して。じゃあね」

 言いたいことだけ言って、電話が切られた。

「なんだよ」

優はスマホを睨んでから美弥に目をやった。
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