体から堕ちる恋――それは、愛か否か、
「父さんが好きなんだよ、このホテル」

美弥は優をしげしげと見つめた。

「なんだよ」
「そのがさつな雰囲気からは想像できないけど、沖田優の家ってセレブなのね」
「バカにしてる?」
「してない。素直に感嘆してるの」
「別にセレブなんかじゃないよ」

と言いつつも、コンシェルジェと笑顔で挨拶をかわし、慣れた様子でロビーを抜けてカフェラウンジに向かう姿が、ホテルの格式に負けていない。こういう場所によくなじんでいるのわかる。

中庭に向けてオープンテラスになっているカフェラウンジには大きくてゆったりとしたソファがいくつもあり、バーカウンターも備えられていた。

数組の客がくつろいでいたが、美弥は会ったこともない生美がすぐにわかった。
< 161 / 324 >

この作品をシェア

pagetop