体から堕ちる恋――それは、愛か否か、
それは優に、1年間は美弥と距離をおけ、いや、とりあえず彼女との関係を切れと要求しているのだ。
美弥を選び、綾香を捨てようとした優に、それならまず彼女を捨てろと綾香は言っているのだ。
綾香の目には強い意志が宿っていて、それは「好き」という思いを超えて、優には美弥と優への宣戦布告のような目つきに見えた。

断ったらどうなるのかと聞いてみたかったが、綾香の強いまなざしに断ることなどできないと考え、やめた。

美弥と1年間、会えなくなる。それだけではなく、連絡を取ることも綾香は許さないだろう。
いつもならあっという間に過ぎるはずの1年だが、これからの1年が優にはとてつもなく長いものに感じた。

1年後に美弥と自分の気持ちはどう変化しているのだろう。

優と美弥をつなぐ確かなものは何もなく、2人で過ごした時間と寄り添い始めた気持ちは、時間と共にただの思い出となってしまうのかもしれない。
それなら、それだけの思いだったということか、と優は心の中で苦笑いをした。
そして、どうしても離れがたいという熱に押されて、自分勝手な理由をつけて美弥との関係を続けた自分の非を十分に納得し、「わかった」と答えた。
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