体から堕ちる恋――それは、愛か否か、
こんなにもすんなり了解してもらえるとは思っていなかったのか、綾香自身驚いたような顔をして優を見た。

「ただし、あとで問題がおこらないようにいくつか付き合う上での条件を明記して、簡単な証書を作っておきたい」
「条件て、どんな条件ですか?」と、綾香が問う前に敦子が口をはさんだ。

「たとえば……」

頭に浮かんでいることを言おうかどうかためらっている優を見て、その内容を察した勇が「それは2人が決めればいいことですから」と助け船を出した。

「でも、変な条件を無理やり押し付けるなんてことはないですよね」

敦子のこの言いように、勇は初めて軽く敦子を睨み、言葉を返した。

「変な条件とは?」
「た、たとえば、例えばもし綾香が妊娠するようなことになっても1年で別れるとか」
「え?」

優と勇は驚いて思わず声をだし、綾香は「お母さん、やめてよ!」と敦子の腕をつかんだ。
敦子はとっさに発してしまった言葉の生々しさに気づき、「たとえば、たとえばの話ですよ!」と、怒ったように言った。
< 208 / 324 >

この作品をシェア

pagetop