体から堕ちる恋――それは、愛か否か、
「綾香が結婚?」

拓海が目を大きく開いて驚く。
その顔もやはりリスみたいだと百合は思った。

「お母さんが言うには、ね」
「へえ、そうなんだ。ぜんぜん知らなかった」と言って、拓海はビールをごくごくと続けて飲んだ。

「もしかして、よけいなこと言っちゃったかしら? でも本当のところはわからないから」
「別にいいよ。ただ水臭いなと思っただけ。でもまあ、仲良くても男友達には言いづらいのかな」
「仲がいいから、余計に言えなかったのかもしれない」

それ以上拓未は綾香の結婚話を気にかけることはなく、気兼ねのない飲み会は楽しく続いた。
百合は東京で働き始めてから半年以上がたったが気安く話せる女友達も、男友達もまだいなかったので、地元のゆるい雰囲気にほっとした。
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