体から堕ちる恋――それは、愛か否か、
「別れる?」、と驚いて尋ねる私に、啓太は「うん」と、微笑さえ浮かべて頷いた。

意味わかんない。

右手に持っていたグラスを乱暴にカウンターに置いて、もう一度聞いた。

「別れる? どうして?」

赤い液体がグラスから飛び出しそうなほど揺れた。

いや、実際、少しグラスから飛び出してカウンターを濡らした。

「付き合ってもうすぐ5年じゃん? 僕はまだ結婚とか考えていないけど、美弥はそろそろしたいでしょ。最近、そんな気配感じるし。待たれてるって思うと責任感じるんだよ」

何をぬかしているのだ。

ゴールデンウィークに行ったカンクンで、「新婚旅行はここでもいいな」、なんてことを言ってキスしてきたのはあんたでしょーが。

それともあれは、別に私との新婚旅行を想定してたわけではなかったとでも言うのか。
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