体から堕ちる恋――それは、愛か否か、
「で、俺も昨晩聞いたかもしれないけど、覚えてないから聞く。そっちはどこで何してる?」

「SOMYでマーケティング」

「へえー。じゃあ会社は品川だね」

両社とも大手企業なので、場所は互いに知っている。

「家はどこ?」と、ほぼ同時に尋ねた。

何かと同時に同じことを口にすることを、本人たちは気づいていない。

「私は恵比寿」

「俺は中目黒」

日比谷線で隣り合わせの駅だ。

「俺たち、意外と近くで生活してたんだな」

「同じ電車に乗ってることもあったかもね」

再会するまでの間、どこかですれ違っていたかもしれない距離にいたことにちょっと驚きながら、2人は日比谷線に乗った。

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