体から堕ちる恋――それは、愛か否か、
「疲れた体を慰労してあげようと思ったのに」

美弥も真似して、グラスの中の氷をひとつ口の中に入れ、冷たい塊を飴のように舌で転がした。

「ごめん、僕はまだ20代だから大丈夫」
「僕“は”って言ったわね、“は”って。嫌な感じ」

にやにやしている生美をにらむ。

「あはは。好き好き、その美弥さんの流し目!」
「流してんじゃないの。にらんでるの!」
「どっちでもいいよ。色っぽい」

ふん、と怒ったふりをして美弥はそっぽを向いた。

「じゃあ、どこか行きたい所があるわけ?」
「海外。美弥さん、夏休みと週末くっつけて6日くらい休めない?」
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