体から堕ちる恋――それは、愛か否か、
でも優は、「何で苗なんて、植えてたんだよ?」と、そっちの方が気になった。

「だって園芸部だもん」
「園芸部?」

優はそんなことも知らなかったし、それを聞いて優さえも「園芸部ってなんだよ」と思い、さらに「うん。女みたいだからって、みんなにバカにされてたんだけど」と、生美がはにかんだときには、「そりゃ、そうだよな」とも思った。
でも生美はそんな優の態度にも失望せずに話し続けた。

「でさ、その先輩が『私、この花壇きれいだから大好きなの。へえ、君が作ってたんだ、有難う』って笑いかけてくれてさ、でね、『花が好きな男子って、かっこいいよね。じゃあね!』って言って、コートに戻っていったんだ。ちょうど周りにいた女子たちがそれを聞いて、『そうだよ、花が好きな男子ってかっこいいよ』って、急に言いだしてさ。その先輩、後輩からすごく人気があって、憧れている女子が多いんだよ」

興奮気味の生美に優はその先輩女子の名前を尋ねたが、生美は知らないと言って教えてくれなかった。

その後、級友たちの生美への接し方はがらりと変わり、もともとルックスも性格も良かった生美はあっという間に人気者になった。

その先輩女子が、生美を、生美のあるべき場所に戻してくれたのだ。
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