体から堕ちる恋――それは、愛か否か、
泊まっていくつもりだったに違いない綾香に「今日はもう送っていくよ」と声をかけ、優は先に玄関まで歩いた。

仕方なくバッグを持って優の後についていった綾香は、玄関の手前にある寝室のドアが薄く開いていたので何気なく中に目をやった。

Tシャツがハンガーにかけて窓のカーテンレールにつるされていた。

その胸にプリントされた文字を何気なく読んだ。

It’s a SOMY

さっきニュースで聞いたばかりの社名。

SOMYにお勤めの柏木美弥さんが――と、確か女子アナが言っていた。

そういうことなの?

綾香は驚きと怒りがいっしょくたになった気持ちを懸命に胸の中にしまいこみ、とりあえずは優に駅まで送られて帰って行った。
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