体から堕ちる恋――それは、愛か否か、
でも優は「俺は」、と答えた。

「東南アジアに行かない?」ではなくて「東南アジアにでも行こうかと思ってる」と言った。

その計画に綾香が入っていないのは明らかだ。

でもそれにも気づかないふりをして「東南ジアかあ。香辛料が強いご飯て、あんまり得意じゃないけど大丈夫かなあ」と言ってみる。

優が綾香の顔を見る。

少し驚いたような表情で。

ちくんと胸を刺す。

でも「綾香は辛いのとか苦手だもんな。虫も多いし」と言ってくれたから、ほっとして「辛くないのもあるよね。虫はこわいけど、虫よけスプレーとかもっていくから」と笑ってみせた。

それには優は何も答えない。

代わりに「お盆は実家に帰るんだろ?」と聞いた。

はぐらかされた。

「うん……2日くらいは休んで帰ろうかと思ってる。優君はお盆は休まないの?」

「実家は東京だし。混んでるからどこにも行きたくないから普通に仕事して普通にビール飲んでご先祖様をお迎えするよ」

結局、今年の夏休みの計画はなにも決まらなかった。
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