囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~
キッチンに立った玲奈の背中と会話していて、言われてみれば確かにそんな気もするかなぁと思うも。
だからと言って、文句のひとつも言わずに、休みの日の朝から突然訪ねてきた友達にコーヒーを入れる気になる玲奈はマメなんだと思う。
肩の高さまで伸びている黒髪が、コーヒーを入れる動きに合わせて揺れる。
それを眺めながら、せめてもと、テーブルの上に置きっぱなしになっているパンのゴミやらを、コンビニ袋にまとめる。
「で? 本当はアルコールが入ったところで誰彼構わずホテル行ったりしないし、むしろそんな事昨日が初めてなのに、慣れてるしーなんて嘘ついて笑ってきた華ちゃんは、これからどうするの?」
さっきパンを食べながら話した流れを言いながら、玲奈がコーヒーの入ったマグカップをふたつ置いて座る。
ありがとうとお礼を言ってから、目の前にある黒い液体を眺めて「別にどうも」と答えた。
「どうもって、本当にどうも? 今までと何も変わらないって事?」
「だって、そもそも変わらないために、こんなの慣れてるって嘘ついてきたんだから。むしろ変わっちゃったら私の必死の演技が全部意味なくなっちゃうし」
「まぁ、そりゃそうなんだろうけど……。でも、本当は覚えてるんでしょ? 昨日の夜の事」
「うん」
「及川とそんな事があったのに、本当に今まで通りの態度でなんていられるの?」
「好きなんでしょ?」と言う玲奈に、「好きだから、今まで通りでいられるのかも」と答えてコーヒーの入ったマグカップに唇をつけた。