囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~
「その下に書いてある〝裏切られたり、大事なモノを脅かされたりすると、激しい怒りに駆られ手がつけられない〟って方が気になる」
「あー、それ、ついこないだ体験したかも。どっかのメルヘンチックなホテルで」
えっ、と顔を上げると、ひとつのスマホを覗き込んでいる体勢だったからか、思いのほか及川の顔がすぐ近くにあって驚く。
しかも意味深な笑みを浮かべている及川に、ホテルでの強引なキスを思い出してしまう。
顔が赤くならないうちに、また俯いて、視線をスマホに固定した。
それでも刺さる意地の悪い視線に、下唇を噛みしめる。
「そういえば、あのまま泊まったの?」
誤魔化そうとする気持ち半分、純粋な疑問半分で聞くと、及川は「まさか」と笑う。
「ひとりでラブホに泊まる趣味なんかないし。それに、深月にひどい事したって落ち込んでたのに、あんな部屋じゃ落ち着かないしね」
「……やっぱり中も童話チックだったんだ」
そういえば、チラッと視界の端に映っただけだったけど、ベッドとか天蓋つきだった気がする……と思い出していると。
及川が耳元に口を寄せる。
「今度、一緒に泊まろっか」
逃げ回っている自分を知っているだけに、直接的すぎる誘い方をされてなにも言えずにいると。
不意に伸びてきた手に顎を持ち上げられて……そのままキスされた。
あまりに一瞬の事に何も言えずにいると、唇を離した及川がニッと笑う。