囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~
「勝手に好きになったのは私だし。だから、及川には気にしたりして欲しくない」
そう言った私に、玲奈はため息を落とす。
「だから、昨日の夜の事なんて何も覚えてないなんて嘘ついたってわけね。まぁ、気持ち分かんなくはないけど。同期だし配属先も一緒だし。
だけどなぁ……」
納得いかなそうな声で呟いたまま黙るから、なにと先を促すと「私の勘違いかもしれないけどさ」と切り出される。
「及川も華のこと特別な感じで見てると思ってたのになって」
「それ、三ヶ月前にも聞いた」
「うん。言った。言ったけどまだ納得できないから何度でも言う」
そんな宣言をしたあと、まだ不満そうな顔をした玲奈が続ける。
「それに及川、ここ一年くらいは女遊びしたとかそういう話聞かないのから止めたのかと思ってたのに。
昨日、誘ったのってどっちからなの?」
「……及川」
「じゃあ、噂にならないだけで影ではそういうの続けてたってだけなのかなぁ」
確かにそれは私も思った事だった。
入社して少しの間は、及川のそういう話はよく同期の間で話題になっていた。
男同士だとそんな話をよくするらしくて、及川から話を聞いた同期がみんなでの飲み会の時に口を滑らせて……みたいな、そんな感じで知る事は少なくなかった。
そのたびに、女子サイドからは『最低ー!』だのなんだの言われて。男子サイドからは『モテ男撲滅しろー』みたいにからかわれていた。
それがここ一年、まったく話題に上がらないのは、及川がそういう遊びを止めたからなのかなとなんとなく思っていたけれど。
昨日の夜、酔ってフラフラした私をホテルに誘ったのは他でもない及川だった。