囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~


及川の住むアパートは、駅から歩いて十分くらいの場所にある。
一度来ただけだけど、ひたすら大きい通りを歩いていけば着くから、迷うことはなかった。

歩いていくうちに、黒い四角い箱が並んだ、〝アパート〟っていう単語には相応しくない建物が視界に入ってくる。

正直、付き合い出してから及川の部屋に来ることは避けていた。
それはやっぱり、関係をすすめることへの恐怖……というか、及川に捨てられてしまうことへの恐怖が原因なのだけど。

及川が、身体の関係を持った途端、気持ちが離れはじめる傾向にあるのは知っているし、自分だけが例外だとも思えない。
だから……逃げていた。

もっといえば、現在進行形で逃げている真っ最中だ。

でも、風邪で寝込んでるってなれば仕方ないし、話は別だ。

大きなビニール袋いっぱいに持ってきたのは、果物の缶詰とゼリータイプの補給食、プリンにヨーグルト、それにスポーツドリンク。

聞いてみて、もしも食欲があるようならまた何か買いに出ればいいかと思って、とりあえずと持ってきたモノだった。

そういえば、ひとり暮らしだと体温計とかも持ってないのかな。
買って来ればよかったかなぁ……と考えながらインターホンを押すと、しばらくしてドアが開いた。


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