囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~
「お茶ちょうだい」
ベッドに深く座った及川に言われて近づくと、隣に座るように言われて……まぁ、他に座るところもないしなと言われた通りに腰を下ろす。
軋む音を立てずに沈んだベッドが、あまりにふかふかで少し驚いたあと、及川の顔を覗き込むようにして見た。
「熱あるの? ちゃんと計った?」
「んー……」
「朝は何か食べられた? 薬は?」
「んー……」
よほど怠いのか、頭が回っていないのか。
及川は曖昧な返事をするだけで何も答えてくれないから、自分で確認しようと及川のおでこに手を伸ばした時。
その手を掴まれたと思ったと同時に、視界がぐるっと回った。
ぽふん、と埋まった上半身。
視界に映るのは、上から覗き込む及川のニッといういたずらっ子みたいな笑み……。
なにが起こったのか、しばらくは事態が把握できなくてぼーっとしていたけれど。
及川にベッドに押し付けられたんだと気づき、ムッとして眉を寄せる。
風邪なのにふざけてこんな事してる場合じゃないでしょ、と。
でもそれを声にする前に、あれ……とふと疑問に思った。
及川って本当に風邪を引いてるんだろうかって。
だって、顔色だって普通だし、別に体調が悪そうなわけじゃない。
咳だって出ていないし、鼻声だとかそういうわけでもない。
それに……私を押さえつけてる手から伝わる体温は、私よりも冷たいくらいだ。
……おかしい。
「風邪って、もしかして嘘?」
眉を寄せたままそう聞くと、私をベッドに組み敷いた状態のままの及川がニコッと笑いそれを肯定した。