囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~
「あれは深月のせいでしょ。飲み会の時、大崎のコーチャーやってるって話になっただろ?」
「ああ……そうだったかも」
「同期のやつらに年下男育てるとかやらしいって色々からかわれてたのに、深月がちゃんと否定しないから」
面白くなさそうに笑う及川に言われて、その時の事が頭に浮かぶ。
なんの話しからか、私が大崎くんのコーチャーを任せられてるって話になって。
でも素直だし従順だし、いい子だよって話をしたら、自分の好みに育てるとかやらしいって、酔った小田くんあたりに言われて……。
お酒の席での会話だし、わざわざ否定するのも面倒くさかったから、確かに流した覚えがある。
それもいいかもね、なんて。
でも、あんなのただの冗談だったのに……あんな言葉で?
そう思い顔をしかめていると、及川が笑う。
「おうし座は、大事なモノが奪われそうになると怒りに駆られるって書いてあったし、それ深月も身を持って知ってるでしょ。
三週間前、童話の城みたいなホテルで」
ホテルって単語にカッと顔に熱がこもったのが、自分でもわかった。
私を見つめた及川が優しく、でも困ったように微笑む。
「深月の告白遮っておいて、でも深月が心変わりするかもって思ったら怖くて仕方なくて……こっち向いて欲しくて、それで。
でも……深月抱いても、安心するどころか、不安になるばっかりだった」
「不安?」
「深月抱いて自分の気持ちはハッキリ分かっても、深月の気持ちが分からなかったから。
翌朝、忘れたっていう深月に全部なかった事にされるのが嫌で、わざわざ既成事実告げて繋ぎ止めた」
「そしたら、そんなの日常茶飯事だ、みたいに言われて余計不安になった」と責めるように言う及川に、「だって」と、もごもご言い訳をする。