囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~
お店を出て駅まで向かう途中。少しふらついたところを、及川が腕を掴んで支えてくれて、それに『ありがとー』って笑いながらお礼を言って。
いつまでも腕を離さないからどうしたんだろうと思って見つめていたら、『あのさ、少し休んでく?』と、聞かれた。
アルコールの回ったぼんやりとした頭だったけれど、その意味を分からないほどじゃなかったから、返事に困った。
だって私は及川に振られてる。それなのに私を誘う意味が分からなくて。
『深月が嫌じゃなければだけど。もう少し一緒にいたいと思って』
だけど……一年想いを寄せてきた相手に誘われて、断るなんて選択肢は私の中にはなかったから。
『いいよー』と、わざと軽い口調で答えた。
その時から既に、今朝の誘導尋問までの計算は始まっていたのかもしれない。
「しかし、華もなんでよりによって及川とホテルなんて……振られた男にいいようにされるなんて」
ぶつぶつ言いながらコーヒーを飲む玲奈に苦笑いを浮かべて、私も同じようにカップに手を伸ばす。
「本当にね。あさはかっていうか、情けないっていうか……。好きだからって気持ちを免罪符にバカな事してるっていうのは分かってたんだけどね。
及川が私の事好きじゃなくても、誰が相手でもよかったとしても、その瞬間だけは私を想ってくれるんだって思ったら……それでいいやってなっちゃって」
「笑っていいよ」って言ったけど、玲奈は眉を寄せて「ツラすぎて笑えない」とまたコーヒーを飲んだ。