囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~
「俺だって、いい加減な気持ちで付き合ってるわけじゃないよ。
……まぁ、深月は今までの俺をこれでもかってほどに見てきてるし、すぐに信じてもらえるとは思ってないけど」
そんな事ない、信じる、とは言えずに黙って見つめていると、困り顔で微笑んだ及川が、そっと私の顔に手を伸ばす。
及川に、ゆっくりと触れられる。
目の辺りからこめかみを通って髪を撫でる大きな手に片目を閉じると、「俺に触られるのも嫌?」と静かなトーンで聞かれた。
及川は、きっと気付いてる。
私がこの部屋に来たがらなかった理由も……この前、飲み会を優先させた理由も。
及川の、女の子に対して薄情な部分を知っているからこそ、及川にとっての〝女の子〟になるのが怖いって私が思ってる事を。
及川のそういう部分を知っているからこそ、及川の〝好き〟の言葉さえ、ちゃんと心からは信じ切れていない事を……及川は気付いてる。
その上で聞いてきた及川に、考えた後、頷いた。
軋む胸が、痛くて苦しくて……声が喉の詰まる。
「嫌。だって……回数を重ねれば重ねるほど、きっと、思い出になんてできなくなるから。
あの夜の事……忘れたなんて嘘なの」
一拍おいてから「今でも覚えてる」と告げると、及川は驚いた表情を浮かべて「え……」と小さく声をもらした。