囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~
「及川のする事全部が優しくて、嬉しかったから……あんなの、忘れられるわけないじゃない」
当たり前でしょ、というニュアンスで言って笑ったけど……胸が苦しいせいで苦笑いになってしまった。
でも、これでもう私の中には嘘も隠し事もなくなって、そのせいか少しスッキリしていた。
同期としての仲を続けるためだとか、及川に気を使わせないためだとか。
そういう事情や理由も取り除けば、私の中に残るモノなんてすごくシンプルだ。
目の前で驚いた顔を浮かべたまま呆けている、女関係に至っては決して褒められたヤツじゃない、及川が……ただ、好きっていう想いしかない。
付き合っている状態で一度関係を持ってしまったら、そこで及川の気持ちは冷めちゃうんじゃないかって事が怖かった。
でもそれ以上に好きだから。
いつか及川が、牡羊座は積極的だとか言っていたけれど。
好きって気持ちに駆られてしまう、という意味ではあたっているのかもしれない。
「好きでもないくせにあんな優しく触るとか……他の女の子が夢中になっちゃうのだって及川が悪い……どうしたの?」
いつかの夜の事を思い出しながら文句みたいに言って見上げると、さっきまでは驚いた顔をしていた及川が、今は片手で口元を覆っていて、耳を赤く染めていた。
照れてるのは分かるけど、その理由が分からなくて聞くと、及川が目を横に逸らしながら答える。