囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~


「いやだって、深月が覚えてるとは思わなかったから……。俺、あん時結構余裕なかったし必死だったし夢中だったし……それ深月が覚えてるとかカッコ悪い」
「でもさっき、忘れてたって言われてショックだったみたいな事言ってたじゃない」
「行為自体は覚えてて欲しいけど、俺のそういう仕草っていうか表情とかは忘れて欲しかった」

「なにそれ、勝手すぎるでしょ」と口を尖らせた後、「なんで、余裕がなかったの?」と気になった疑問を口にする。

思い出してみても、そこまで余裕なかった素振りもなかったと思うから余計に不思議だった。

あの夜の事で私が印象的だったのは、やたらと優しく触るな、とか、丁寧だなって事くらいで、それは余裕がなかったっていう及川の言葉とは真逆に思える。

じっと見つめながら聞く私に、及川はまだ口から下を片手で覆ったまま答える。

「あの時から、好きかもとは思ってたし。それに……深月、いちいち可愛かったから」

及川の言う言葉は、いつも通りの軽いトーンだし、今までの女遍歴を見る限りとても本音だとも思えないハズなのだけど……。
それでもいいと思ってしまうのは、惚れた弱味なのか。

もう、傷つけられたってなんだっていい。
そう思い、私から及川に手を伸ばす。

「深月?」と不思議そうにする及川の首に腕を巻きつけ抱き寄せて……そして、私から唇を合わせた。

「可愛いのはそっちでしょ」

ちゅっと触れるだけのキスをしてから、そう言うと。
及川は驚いた顔をした後「いや、深月でしょ」と笑い……今度は及川からキスをする。


< 142 / 194 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop