囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~
「深月、今日暇? このまま俺んち寄ってかない?」
いつかはためらった問いかけだって事も忘れて、「んー、じゃあ寄ってこうかなぁ」と何も考えずに答えると。
そんな私に気付いてか、及川がふはっと笑みを吐き出す。
嬉しそうなその表情を不思議に思いながら見つめていると、及川が愛しそうに見つめ返してみるもんだから、恥ずかしくなって及川をぐいっと押す。
もう片方の手では赤くなってしまった顔を隠していると、及川が押していた私の手を取り、握り直した。
ただの同期だった頃。
何度、この手をとりたいと願っただろう。
繋がれた手を眺めながら、ふとそんな事を思った。
同期じゃ嫌だった。だけど、それ以外に私が傍にいられる方法なんてなかったから、嘘をついてでも必死にそこに立とうとして……でも、結局無理で。
美形だからとか、包容力があるからじゃなくて。
過去に、遊び感覚で女の子を傷つけた事があるとか、そういう事関係なく。
隣に立った居心地の良さに、気付いたらその存在に想いが囚われていた。
好きだから、同期だから、傍にいたいからって、色々難しくして想いをこじらせてしまっていたけれど、考えてみれば私が望んでた事なんて最初からひとつだけだった。
及川の隣で、こんな風に想いに満たされて笑いたかったんだ。