囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~
「林檎ジュースとか、深月は相変わらず子ども舌だなー」
「メロンソーダに言われたくない」
話しながら席に戻って、ふぅと一息つく。
お店の中が明るいからか、窓の外は暗さを増しているように見えた。
これが、あと二ヶ月もすれば19時っていっても明るさを残すようになるんだから不思議だ。
満席じゃないとは言え、ガヤガヤとする店内には学生が多いように見える。
ここのすぐ近くにある専門学校の生徒かなぁと思いながら眺めていると、向かいの席から送られてくる視線に気付いた。
「なに?」
聞くと、及川は尚もじっと見てから「いや、いつも通りだなーと思って」とわずかに笑う。
挑発にも受け取れる笑みを浮かべながら、私を観察するように見つめる瞳を見つめ、一体なんのことだろうと首を傾げそうになってからその意味に気づいた。
及川が、なにを言いたいのか、に。
何か言うべきか、とぼけるべきか悩んでから、ゆっくりと笑みだけ浮かべる。
及川が言いたいのは、金曜日の夜の事。
関係を持ったにも関わらず態度の変わらない私を、不思議に思っているんだろうなっていうのは分かった。
私が真面目なのは及川だって知ってるから。
それに……私が及川を好きな事だって、及川は知ってるから。
それを考えれば、不思議に思われたって当然だ。
「あの時の事、本当に覚えてねーの?」