囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~
探るような瞳に見つめられたまま「うん」とだけ返事をする。
こんな風に見つめられたり、さっきみたいにファミレスに誘われたり。
今日のお昼みたいに、他にも席はたくさん空いていたのにわざわざ私の隣の席に座られたり。
そういう事全部を、何も感じずに流してきたわけじゃない。
本当は、ずっと緊張してた。ドキドキしていた。
だって、私は一年以上及川に片思いをしていて。その及川と先週、ホテルに泊まって……触れ合った。
そんな、人生における一大事を平気な顔して流せるような、器用な女じゃない。
それでも必死に何でもないふりして過ごしてきたのは……ただ、及川に気にして欲しくなかったから。
一瞬でも気を抜いて本音を見せてしまったら、あの時ついた嘘、全部がバレてしまう。
だから、必死だった。
平気な顔して笑いながら、心の中ではいつだって必死で精一杯だった。
「それ気にして、今日誘ったりしたの?」
なんでもない顔して聞くと、及川は私を見ながら「そういうわけじゃないけど」と、ふっと笑ってから続けた。
「ああいうの、慣れてんの?」
「やけに気にするね」
「んー、だってやっぱり意外だったから。よくすんの? ああいう事」
真面目とも違う、からかっているのとも違う、感情の読みにくい顔で聞いてくる及川に「たまに」と答えてから笑顔を向ける。
「だから、気にしてても損なだけだから忘れちゃっていいよ。
私が覚えてないのに及川だけ気にしてても仕方ないでしょ」
そう、口早に言ってから「こんなところ花岡さんに見られたらまた睨まれちゃいそう」と、話題を変え苦笑いを浮かべると。
及川もははっと笑う。