囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~
「こんなとこで会うなんて思わなかったからびびった」
「……こちらこそ。平日なのに休みなの? 仕事は?」
「いや、これも仕事のうち。小銭足りなくなっちゃって両替してこいって使いっぱしり」
聡史と付き合っていたのは、大学一年の途中から大学三年の途中までの、約二年。
別れてからは避けていたわけでもないけど、もともと取っている授業も重なっていなかったから、会う事なんてほとんどなく卒業の日を迎えた。
だから、聡史がどこに就職したのかも知らないままだ。
「職場、この辺なんだ」と呟くと、スーツ姿の聡史が笑顔で答える。
「駅の向こうに、家電量販店あるだろ? そこ」
「へー。たまに行くけど全然気づかなかった」
「まだどっちかっていうと裏方回ってる事多いからなぁ。今年からちょこちょこ店出るようにもなったけど、お客さんに商品の事聞かれても100%答えられないから、声かけられただけでビビってる」
「聡史らしいね」
その光景が浮かぶようで思わず笑みをこぼしていたけど……。
職員からチラチラと向けられる視線の束に、仕事中だしあまり話もしていられないなと思い出して、両替伝票に記入するように言う。
「あそこの白い紙が両替伝票だから、そこに記入して窓口持って行けば大丈夫だから。
100枚以内なら手数料かからないけど、それ以上になると324円手数料かかるから頭入れといてね」
「おー。ありがとな」
伝票のある場所を教えて、聡史がそれに記入し始めたところで席に戻ると、前に座っていた手塚先輩が振り返ってこそっと聞く。