囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~


警戒しながら歩いていたら、ある日、聡史が後ろから走って近づいてきて。
肩を掴まれて悲鳴を上げそうになったところで、『いきなりすみません! でも俺、毎日後ろ歩いてるしなんかまるで痴漢みたいで、黙ってられなくて! でも、違うんです!』と説明されたのが初めだった。

それから、帰りが一緒になると、同じ道だしと並んで帰るようになって、お互いの事を知っていって。
少しした頃に、聡史に告白されて私も頷いた。

それからの付き合いは平凡だったけど楽しかったと思う。

「目立つタイプじゃないけど、一緒にいると落ち着くんです。疲れた時とか傍にいると癒されるっていうか、そんな感じでした」
「へぇ。なんかいかにも好青年って感じの見た目だったもんね。
でも、それなら、なんで別れたの?」
「んー……説明するの難しいですけど、友達みたいになっちゃったんです。
好きは好きだけど、恋愛じゃなくなっちゃってて……じゃあ、友達に戻った方がいいんじゃないって」
「なんか、穏やかな別れ方ね」

そう言って笑う先輩に、私も同じように笑う。
今考えてみれば確かに穏やかすぎる別れ方だった。

お互い笑顔で終わったというか。あとくされなんてひとつもなかったから。

「それから友達に戻れたの?」と聞かれて……眉をしかめて笑う。

「無理でしたね。だって、付き合っていた時に当たり前みたいにしてた事は、友達じゃしないし。
なんかその辺のラインがよく分からなくなっちゃって、会わなくなりました」


< 51 / 194 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop