囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~


結構ぼやかして言ったつもりだったのに。
先輩は私の顔を見ながら「へぇー」と呟いて……それから「つまり」と口を開いた。

「友達になったのに手出してこようとする元彼に、それはおかしいんじゃないかなってなって会わなくなったって事?」
「……さぁ」

仮にも会社の延長線上の飲み会だっていうのになんて事言い出すんだろう、と苦笑いを浮かべて誤魔化す。
しかも、言っている事が当たっているだけに否定もできなくて本当に困る。

それぞれ盛り上がっている様子の室内には色んな声が聞こえていて、その中には花岡さんの高い声も混じっていた。
及川が隣だしもうそれはそれは嬉しそうな顔してはしゃいでるんだろうなぁ。

「まぁでも、男なんてそんなもんよ。一度寝た女はいつまでも自分を想ってるって勘違いしてるってよく言うじゃない」
「そうなんですかね」

適当に返事をしながら、ジンジャーエールの入ったコップを口に運ぶ。
最初の一杯はビールだったけど、そんなにお酒は強い方じゃないから二杯目からはたいていウーロン茶かジンジャーエールだ。

隣でビールを煽った先輩は、高岡さんにビールの追加を頼んだ後、大崎くんを覗き込むようにして話題を振った。

「そんなもんよねー。大崎くん」

その話題は……どうだろう。大崎くん、ついてこれるかな?と少し不安になりながら隣を見る。
この間、『そういう関係ってなんすか?』とか聞いてたから、あまり免疫ないのかもと思ってたけど……どうだろう。

心配になりながら見つめる先で、大崎くんは私の心配通り、顔を赤くして困った表情を浮かべていた。



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